【日本料理の御献立】名称一覧
今回は和食の献立名や種類別の意味をまとめました。
料理の作り方や調味料割合などは、作業を行う店舗が変わるとそれぞれに違った方法があるため、いちから覚える必要がでてきますが、調理の雑学や豆知識は、どこへいっても使えるだけでなく、覚えておいて損はないですから会話を円滑に進めるためにもお役立ていただければと思います。
日本料理の献立名一覧
■ 各献立名に移動いたします。(※ 本文中の献立名には送り仮名をつけておりますが、実際には漢字のみで表すことが多いです)
先付け(さきづけ)
料理の最初に出す、お通し、座付き、付き出しと同じ意味の言葉で、お酒とともに出す「酒の肴(さかな)」をいいます。
そして、先付けは酒席の会席膳に出しますので、本膳料理や茶懐石料理の膳では使わない献立名です。
御通し(おとおし)
酒席の献立として一番最初に出す料理のことで、通し物、通し肴(ざかな)または先付け、付き出し、座付き肴(ざかな)ともいいます。
箸割り(はしわり)
お通しの別名で、最初に箸をつけるところからこの名があります。
前菜(ぜんさい)
中国料理や西洋料理の用語と同じ意味で使われる献立名で、料理の初めに出す「つまみ物や酒の肴」のことです。
日本料理の会席膳では先付(さきづけ)のことをさす場合や先付のあとに出す数種類の酒菜盛りにこの名を用います。
八寸(はっすん)
≫八寸の意味の詳しい内容を見る
8寸(約24㎝)四方の杉で作った、低いふちのある盆のことをいい、この盆に盛りつけた料理を八寸と呼んでいます。
そして、茶懐石料理では一汁三菜から預け鉢や強肴(しいざかな)などの献立が続き、料理がひと段落したあとに、亭主が酒の肴として出す動物性と植物性の2~3品を八寸と呼んでいて、人数分を盛り込んで取り箸を添えた「取り回し」の形で出されます。
また、会席膳の場合は、はっきりとした決まり事はありませんので、料理の初めに出す「前菜」のことを「八寸」と呼ぶことが多いです。
そして、献立の中間で出すときは「中八寸」として使ったり、焼き物のかわりに「焼き八寸」として出したりと、その使い方は他の献立と調節をしながら色々と変化をさせ、茶懐石のように終盤に出す場合もあります。
■広島県の郷土料理にも「八寸」という慶弔(けいちょう)の際の煮物汁がありますが、こちらは直径8寸の椀や丼に盛るところから、この名がつけられています。
先吸い(さきすい)
前菜のあとや向付けの前に出す椀物で、この椀で味加減や好みを把握しますので、次の献立につなげる役割があり「先吸い物」ともいいます。
そして、椀盛りの構成は、主になる具を「椀だね」添え物の野菜や海藻類などを「椀づま」香りの柚子や木の芽等を「吸い口」といい、この3種類は必ず入れます。
また、昔は響膳(きょうぜん)で座付きに吸い物が出されていたことから、会席料理の一番最初に「座付き吸い」や「座付き吸い物」などの名をつけて出す場合もあります。
■ 響膳(きょうぜん)とは貴族社会に使われる酒宴の祝儀膳のことで、本膳から二の膳、三の膳と続きます。
煮物椀(にものわん)
茶懐石料理の献立では「飯、汁、向付」をのせた折敷(おしき)のあとに続く椀盛りをいいます。
折敷にのせた汁を最初に出すため、深めの椀に盛りつけて「すまし仕立て」で提供します。
向付け(むこうづけ)
茶懐石料理の膳で手前に置く飯と汁の両椀に対して、器を向こう側に置くところからつけられた、なますや刺身の名称です。
■ 会席料理では、なますや刺身のこと全般をこの名で呼んでいます。
■ 刺身の詳しい内容につきましては≫「刺身の語源、由来とは、和食の料理用語集【向付け】」に掲載しておりますので参考にしてください。
炊き合わせ(たきあわせ)
煮物の献立名で、2種類以上の煮物を同じ器に盛り合わせた料理のことをいい「焚き合わせ」とも書きます。
別々に炊いて盛り合わせる⇒炊き合わせ
■ 材料それぞれの持ち味をいかすために別々の鍋で煮ることが多いですが、相性の良い食材は一緒に煮る場合もあります。
また、炊き合わせは関西で多く使われる献立名で、薄味に仕立てることが多いですが、関東では「煮合わせ」といい、味を若干濃いめにする場合があります。
※ 盛り合わせる材料は色、形、香り、食感などを考慮しながら季節感を取り入れてください。
冷やし鉢(ひやしばち)
ガラス食器、竹食器、磁器などに盛りつけた料理を、器ごと冷やして涼しさを演出する夏の献立名です。
焼き物(やきもの)
材料に直火、または間接的に火を加えて焼く料理の総称です。
そして、献立の中でも中心となる重要なもので、茶懐石料理の一汁三菜のひとつです。
お凌ぎ(おしのぎ)
定まった食事時間の他に出される軽食のことで、空腹を凌ぐ(しのぐ)という意味があります。
そして、会席料理では献立の中程より前に組むことが多く、飯蒸し、茶そば、寿司、または芋類や季節の野菜など、腹もちの良い食材で工夫した料理を少量出します。
また、この言葉は、もともと茶懐石料理で「点心」と同じ意味で使われていたものです。
和え物(あえもの)
野菜、魚介、肉類などの材料を下処理したあと、和え衣で和えた料理の総称です。
蒸し物(むしもの)
蒸気を使って蒸しあげた料理の総称で、旨味を逃がさずに調理できるメリットがあります。
(例)
揚げ物(あげもの)
油の中で加熱調理した料理の総称で、そのまま揚げる「素揚げ」と衣をつける「衣揚げ」の2つに大きく分けられます。
※ 天ぷらやフライは衣揚げの中に入り、なす、椎茸、青唐などは素揚げにできる食材で、材料を揚げる油には大豆、ごま、とうもろこしなどの植物油が多く用いられます。
油物(あぶらもの)
揚げ物の別名として使われることが多く、油をたくさん使う料理を「油物」として出す場合もあります。
酢の物(すのもの)
材料をポン酢や土佐酢などの合わせ酢で和えたり、浸け込んだりして調味した料理の総称で、口の中をさっぱりとさせる効果がありますので揚げ物の前後に出すことが多いです。
そして、酢の物として出す料理を先付け、箸休め、強肴(しいざかな)、進肴(すすめざかな)として使うこともありますが、この場合は酸味が強くなりすぎないように仕立ててください。
口代わり(くちがわり)
会席膳の献立で海、山、里の物を少量ずつ盛り合わせた料理のことで、甘味の口取りに代わるものということから「口代わり」の名があります。
口取り(くちどり)
小口から切って、取り分ける肴(さかな)という意味の言葉で「本膳料理」の用語です。
また、口取り肴(ざかな)ともいい、本来は甘味の菓子をさしますが、現在では口代わりと同じ意味で使われることが多く、松花堂弁当や大徳寺縁高の中に入れる場合もあります。
台の物(だいのもの)
足つきの大きな台にのせた料理のことで、献立名として使う場合は、とくに焼き物をさします。
そして、会席膳では一人用のコンロを使った焼き物、煮物、小鍋仕立てなどを「台の物」として出す場合が多いです。
預け鉢(あずけばち)
茶懐石料理の献立のひとつで、一汁三菜、箸洗い(はしあらい)、八寸(はっすん)以外に亭主が心入れですすめる他の料理を「鉢」に盛り込んで取り箸を添えたものをいいます。
料理内容は汁けの多い炊き合わせや和え物などが主なもので、一汁三菜の最後にあたる焼き物と箸洗い(または小吸い物)の間に提供します。
預鉢は一汁三菜が終わったあとに「亭主相伴(ていしゅしょうばん)」といって、亭主が水屋(みずや)で軽い食事をとりますが、そのさいに「客にお預けする料理」という意味からこの名があり、人数分をひとつの鉢に盛りつけて取り箸を添え、客に預けて取り回す形で出されます。
また、強肴(しいざかな)や追肴(おいざかな)、進肴(すすめざかな)も同じように亭主の心入れで出される料理で、お出しする順番や形で名が変化します。
強肴(しいざかな)
一汁三菜、箸洗い、八寸以外に亭主が心入れで客にすすめる料理全般の炊き合わせ、和え物、揚げ物などをいい「強いてもう一品すすめる肴」という意味があります。
本来は初釜などのめでたい茶事に出されていましたが、現在では常に使われることが多くなり、預鉢(あずけばち)や追肴(おいざかな)、進肴(すすめざかな)も同じように亭主の心入れで出される料理です。
■ これらの料理は大きなくくりとして強肴の中に分類され、お出しする順番や形で名が変化します。
進肴(すすめざかな)
懐石料理の献立のひとつで、一汁三菜、箸洗い、八寸以外に亭主が心入れで出す一品や珍味などをいい「酒をすすめる肴」という意味があります。
そして、強肴(しいざかな)追肴(おいざかな)預鉢(あずけばち)も同じように亭主の心入れですすめられますが、これらの料理は大きなくくりとして強肴の中に分類され、お出しする順番や形で名が変化します。
合肴(あいざかな)
焼き物と煮物の間に蒸し物や揚げ物を出す場合、この名が多く使われます。
追肴(おいざかな)
一汁三菜、箸洗い、八寸以外に亭主が心入れですすめる炊き合わせ、和え物、揚げ物、珍味などをいいます。
茶碗吸い物(ちゃわんずいもの)
塗りの器(椀)を使わずに陶磁器製の器(碗)に入れて提供される吸い物のことです。
食材の持ち味をいかす目的で、蒸し仕立ての料理のように器ごと蒸し上げる吸い物や、夏の涼味を演出するためにガラス器を使う場合などがあります。
「蒸し上げる吸い物の例」
○ 茶碗蒸しなど
「ガラス器を使う吸い物の例」
○ 冷やしとろろ吸いなど
箸洗い(はしあらい)
懐石料理で一汁三菜、または強肴(しいざかな)や預鉢(あずけばち)のあとに、口の中をさっぱりとさせて食事に使った箸の先をお洗いくださいという意味で出す吸い物のことで、小吸い物、湯吸い物、ひと口椀ともいいます。
味加減はごく薄く仕立てて、白湯(さゆ)に梅肉を落としたり、少量の塩で味つけした昆布だしを小ぶりの椀にそそいだものや、米のすり流しを少量加えて濃度を若干つけた吸い物を出します。
そして、汁の具材には草の実や野草の芽など、季節感のあるものを浮かす程度に入れ、先に具を食べてから汁を味わいます。
小吸い物(こずいもの)
茶懐石料理で「箸洗い」と同じ意味で使われる献立名です。
一般に、椀の蓋は折敷(おしき)の外に出しますが、小さい器の蓋は中に置くこともあり、この場合は椀に対して必ず右向こう側に置いてください。
■ 折敷(おしき)とは、茶懐石料理で最初に出される「飯、汁、向付」をのせた膳のことをいいます。
箸休め(はしやすめ)
食事の途中で口の中をさっぱりとさせたり、献立の流れや味に変化をもたせるために出す簡単な料理のをいい「箸をいったん休めて次の料理にそなえる」という意味があります。
汁仕立てにする場合が多いですが、少量の和え物や酢の物なども出します。
また、甘味の強い汁物と一緒にお出しする塩味をきかしたもの(塩昆布など)や、お菓子に「しその実」を少量添えてある場合も同じ目的で使われます。
小菜(しょうさい)
普茶料理(ふちゃりょうり)の献立区分のひとつ、または卓袱料理(しっぽくりょうり)の献立として使われる名称です。
普茶料理の献立区分の小菜
笋羹(しゅんかん)、蔴腐(まふ)、澄子(すめ)、素汁(そじゅう)が小菜に区分されます。
笋羹は「たけのこ等の炊き合わせ」、蔴腐は「胡麻豆腐」、澄子は「すまし仕立ての汁」、素汁は「味噌汁(すまし汁の場合もあり)」のことで、それぞれが普茶料理=黄檗料理の献立名です。
■ 黄檗料理(おうばくりょうり)は普茶料理と同じものですが、黄檗宗の総本山である「京都、宇治の黄檗山萬福寺」に伝わる中国の影響を強く受けた精進料理(にんにくは不可)として、この名が用いられます。
ちなみに黄檗山萬福寺の開祖は、いんげん豆の語源とされる明の高僧の隠元禅師で、豆をもたらすと共に普茶料理も中国から伝えたといわれます。
※ 普茶料理の名の由来は「普く(あまねく)茶を衆に供する」または「茶礼に赴く(おもむく)赴茶(ふちゃ)から」ともいわれますが、真相は定かではありません。
卓袱料理の献立の小菜
元々は小さな菜の器という意味がありますが、人数分の料理を直径19~25㎝程度の平皿に盛りつけるため、それほど小さくはなく、宴が始まる前から卓上に出しておきます。
小菜盛りの皿数は3品、5品、7品の奇数とし、多いほど豪華な料理といわれます。
また、小菜は卓上に出しておきますので冷めても大丈夫な冷菜を原則としており、刺身、湯引き、和え物、酢の物、口取り、焼き物、揚げ物(つゆを付けずにそのまま食べられる長崎天ぷらや、少し甘めの下味をつけた空揚げの原型となる鶏肉料理のゴーレン)、香の物などが用いられます。
澄子(すめ)
普茶料理の献立のひとつで、すまし仕立ての汁物のことです。
蔴腐(まふ)
普茶料理の献立のひとつで、胡麻豆腐のことです。
素汁(そじゅう)
普茶料理の献立の味噌汁をさしますが、すまし仕立ての場合もあります。
止め鍋(とめなべ)
会席膳のご飯物の前や一緒に出す鍋料理のことで、鍋のあとの雑炊をご飯物とする場合があります。
そして、この鍋を使うときは汁けの料理が続きますので「止め椀(赤だしなど)」は出さないことが多いです。
※ 汁けの少ない鍋のときはご飯物と一緒に「止め椀」を出す場合もあります。
また、献立の中ほどに同じ鍋料理を入れる場合は「小鍋仕立て」や「台の物」として出します。
御飯物(ごはんもの)
献立の終盤に出すしめ料理のことで、炊き込みご飯や混ぜご飯、寿司類など、米を使った料理の総称です。
そして、米の他に麦や五穀米などを使うこともあり、めん類などの粉物を出す場合は「ご飯代わり」として献立に書きます。
止め椀(とめわん)
ご飯物と一緒に出す椀盛りのことで、先吸いをすまし汁仕立てにした場合は味噌仕立てや酒かす仕立てにして、汁の内容を違うものにします。
そして、先吸いを味噌仕立てにしたり、酒かす仕立てにした場合は止め椀をすまし汁仕立てにしてください。
また、先吸いと止め椀を、味噌仕立てと酒かす仕立てにすることもあります。
湯桶、湯斗(ゆとう)
茶懐石料理では焦げ湯を出すときの器を湯桶といい、そこから香の物とともに出される焦げ湯自体をこの名で呼んでいます。
焦げ湯とは釜の底に残った焦げ飯を、さらに弱火できつね色に焦がし、熱湯をそそいで薄い塩味をつけたものです。
また、米を香ばしく煎ってから湯をそそいで煮立てる場合もあります。
香の物(こうのもの)
漬物の総称として使われる言葉で、香木のかおりを楽しむ際に、たくあんをかじって臭覚を取り戻したということから、この名があります。
香の物の詳しい内容につきましては≫「茶懐石料理で出される香の物の語源、意味、由来」に掲載しておりますので参考にしてください。
水物(みずもの)
水分を多く含んでいる食品のことで、果物、かき氷、飲料などをいいます。
そして、会席膳ではデザートに果物やシャーベットを多く使いますので、この名を用いています。
棹物(さおもの)
羊羹(ようかん)や外郎(ういろう)などを棒状に細長く作ったあと、小口切りにして盛りつける和菓子の名称です。
羹(あつもの)の詳しい内容につきましては≫「羊羹にも使われている羹の語源、意味、由来」に掲載しております。
【小豆(あずき)関連】
甘味(あまみ)
料理の最後に抹茶とともに出される菓子のことで、季節感をいかしたものや、植物をかたどった甘味が出され、羊羹(ようかん)や6月の水無月(みなづき)などがあります。
そして、別名「かんみ」ともいいます。
【関連】
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ご飯物 | 会席料理 | 茶懐石料理 | 松花堂 |
≫献立のまとめ一覧
今回は献立名の意味をご紹介いたしました。
献立につきましては≫「本サイトの献立内容一覧」に掲載しておりますのでお役立ていただければ幸いです。
次回は違うメニューでお目にかかりたいと思います。最後まで閲覧していただき、ありがとうございました。